急性腸炎とは?
急性腸炎とは急性に発症する胃腸に関連する症状(嘔吐、下痢、腹痛など)を伴う病態のことをいいます。
原因
感染性腸炎が原因
原因としては感染性腸炎が一番多くなります。いわゆる食中毒で、腐った食品や卵、魚介類や不充分な加熱処理の鶏肉や牛肉などが原因となります。
ほかには海外旅行(特に東南アジア)などで、生水を飲んだりしても起きます。ペットに付着した細菌でもなることがあります。
原因となる細菌はO-157などの病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオなど、からしレンコンで感染するボツリヌス菌や赤痢、コレラなどがあります。
ウイルス性腸炎が原因
ウイルス性腸炎としては、乳幼児のロタウイルスや牡蠣などの2枚貝によるノロウイルスが有名です。
感染性腸炎の場合は感染者の吐物や下痢便からうつることがあります
非感染性の腸炎が原因
非感染性の腸炎としては虚血性腸炎、抗生物質による薬剤性腸炎や食物アレルギーなどによる腸炎があります。虚血性腸炎は激しい腹痛と血便を主体とし、腸の血流障害により発症します。不整脈による血栓、糖尿病や高血圧などによる動脈硬化や便秘症が原因になります。
また、ストレスで腸が過敏になって下痢や腹痛などの腹部症状をきたす過敏性腸症候群という疾患もあります。
症状
急性腸炎の症状は主に嘔吐、下痢、腹痛などです。炎症が高度の場合には発熱や血便を伴うこともあります。
症状が続けば食欲不振が出現し、特に嘔吐や下痢による脱水症状(尿量低下、口渇、皮膚乾燥、倦怠感)が出現することが多いです。
検査方法
問診や診察によりある程度原因を特定します。
感染性腸炎の原因特定には潜伏期間や特定の食品摂取機会がないかどうかなどで推定します。
便培養
感染性腸炎が疑われる場合は必須の検査になります。細菌の培養には日数を要します。抗菌薬投与をする前に検査提出する必要があります。
血液検査
炎症の程度や、脱水による腎機能障害の出現の有無や、嘔吐や下痢による低血症がないかどうかを調べます。
特徴 | 潜伏期間 | 症状 | 原因食品 | |
サルモネラ属菌 | 通性嫌気性 | 6~72時間 | 激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐 | 食肉、鶏卵およびその加工品、ペット(犬、猫)、爬虫類 |
腸炎ビブリオ | 好塩基 | 8~24時間 | 腹痛、水様下痢、発熱、嘔吐 | 魚介類 |
腸管出血性大腸菌 | O-157 ベロ毒素 | 1~10日 | 激しい腹痛、下痢、血便 | 牛肉、ハンバーガー、ローストビーフ、生乳、サンドイッチ、サラダなど |
カンピロバクター | 微好気性 | 2~10日 | 発熱、腹痛、下痢、嘔吐 | 食肉(鶏肉が多い)、ペットの糞 |
黄色ブドウ球菌 | 毒素(エンテロトキシン)産生、毒素は耐熱性 | 1~5時間 | 腹痛、下痢、嘔気、嘔吐 | おにぎりや弁当(人の手から感染) |
ボツリヌス菌 | 偏性嫌気性、耐熱性の芽胞形成 | 8~36時間 | 嘔気嘔吐、筋力低下、神経症状など | 缶詰、いずし |
ノロウイルス | 人の腸管内で増殖 | 24~48時間 | 下痢、嘔吐、腹痛 | 牡蠣などの2枚貝 |
治療方法
消化管安静
炎症を起こしている腸管を使用すると余計に腹痛や下痢症状がひどくなります。
なるべく胃腸に負担のかからないゼリー食や素うどんやお粥がよいとされています。香辛料の強いものや刺激物、乳製品や脂質の多い食べ物、アルコールやコーヒーは症状が悪化するので控えましょう。
脱水予防
塩分や電解質を適度に摂取できる経口補水液(OS-1®)で脱水を予防しましょう。嘔吐や下痢症状が持続する場合は経口摂取や水分摂取が不十分となり脱水が進行します。この場合は点滴での水分やミネラルの補給が必要です。
解熱剤
38度を超える発熱があり、倦怠感高度な場合は解熱剤を使用します。
鎮痙薬
下痢に伴う腹痛が高度な場合は鎮痙薬を使用します。下痢をとめる目的の止痢剤は基本使用しません。特に感染性腸炎の場合は体外に菌を出し切る、毒素をためないために原則使用しないことが多いです。
整腸剤
急性腸炎の場合はなんらかの原因により、腸管内の正常な細菌叢のバランスが崩れています。このため腸内環境を整えるために整腸剤は使用されます。
抗生物質
急性腸炎の治療には、一般的に抗生物質は必要ありません。その理由としては、ウイルス感染による腸炎や虚血性腸炎などの場合には効果がないこと、細菌性腸炎だとしても多くの場合自然改善が期待できるためです。
感染性腸炎の中でもともと免疫不全がある場合や中等症~重症の場合などでは、細菌性腸炎が疑わしい状況ならば症状の軽減や治療期間の短縮を期待できるため使用する場合があります。
カンピロバクター腸炎の後遺症
カンピロバクター腸炎罹患後の1~3週間後にギランバレー症候群という神経疾患を発症することがあります(0.1%(1000人に1人発症)の発症率という統計があります)。
手足の筋力低下や神経痛(しびれや痛み)がでることがありますので、腸炎改善後に上記のような症状出現がある場合は医療機関を受診しましょう。
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